「キャロリング」
著者:有川浩
出版:幻冬舎文庫
あらすじ
主人公・俊介の勤める子供服メーカーの倒産が決まった。
従業員が数人の小さな会社ではあったが、社員はそれぞれ会社に愛着があり、最終日となるクリスマスまでの最期の業務に精を出すことにした。
その中でも社長の甥である俊介は、世話になった会社から離れがたく、就職活動にも前向きになれない。
もう一つ心残りなのは、小さなすれ違いから別れてしまった彼女のことだ。彼女も同じ会社の社員である。クリスマスまでにこの気持ちに決着を付けなければもう会えない…。
そんな中、事件が起こる。
子供服を扱う事業に関連して運営していた、小学生のアフタースクールの生徒・航平が、母親に内緒で別れた父親に会いに行っていたのだ。
俊介がその事実を知ったのは、なぜか航平に協力して同行していたのが、俊介の元彼女だったからである。
俊介は彼女を叱るが、航平の書いた「ワタルの物語」に心を動かされた俊介は、自分も彼女と一緒に航平に協力することにする。
思いがけず訪れた、彼女と過ごす大切な時間…。
しかし、ある時3人は、凶悪な犯罪に巻き込まれてしまう…!
感想
キャロリングという言葉の意味を知らなかったので、読み終わってから調べてみました。
クリスマス・イブに讃美歌をうたうこと、だそうです。なるほどねぇ。納得しました。このお話は確かにキャロリングですね。ということは、紹介する時期を間違えていますね。
出直したいけれど、書き始めてしまったので続けます。
お話の季節はクリスマスです。
でも、発生する事件が大騒ぎになり、クリスマスであることをしばらく忘れます。
そして解決して、落ち着くと同時に、クリスマスらしさを思いっきり感じます。ですので、12月になってから読むと雰囲気を楽しめるのでおすすめです。時期を間違えてすみません。
主人公の俊介(大人)と、航平(小学生)の男の友情が清々しくて羨ましくなります。
特に、航平の物語を書く才能をいち早く見抜き、大人の事情も関係なしに、航平との友情を大切にする俊介に共感できます。
航平も、素直でけなげで、しっかり男らしくてかっこいいです。
このお話の中では、女性陣はなかなか現実的であるのに対して、男性陣は老いも若きもみんなロマンチストです。夢見がちです。本人たちはそれぞれ真剣なのですけれどね、そこも面白いです。
大人たちが夢見がちなので、航平のかっこよさが際立ちます。
クリスマスの雰囲気が好きな人、子供がすごくかっこよく頑張るお話が好きな人におすすめです。